Aさんのケース Aさんは20代後半。 情報関係産業に携わっているとのことだが、 プロジェクトマネージャーをしていたというから、優秀な人材だ。 この業界、転職も多い。Aさんも5度目の転職になる。 Aさんは、人工皮膚入りのかつらを使っている。 かつらは、分け目とつむじは地肌が見えるため、ばれやすい弱点になりうる。 そこで、この部分だけは皮膚そっくりの色合いの素材を使い、地肌が見えてもよいように 作るのが一般的である。 周辺にピンと呼ばれる金具を備えており、これでぱちん、と自毛に留める方式だ。 Aさんは、このタイプのかつらを使い始めて3年になる。 大手かつら会社で製作したもので、自分でもよく出来たものだと思っていた。 特に、人工皮膚周りは、人間の皮膚そっくりに出来ていて、これならバレない、と確信していた。 Aさんは、若い社員5名を指導する立場になった。 新しい職場は、一つ、いやなことがあった。 Aさんの机は、管理職ということで、部下の机に正対して設置されている。 部下が持ってくるドキュメントを直す間、部下はAさんの机の前に立ってAさんを見下ろす形になるのだ。 Aさんとしてもあまり気分はよくないが、机の配置がそうなっている以上仕方がない。 だが、ドキュメントを読んでいると、部下が自分の頭を凝視しているようで気が気でなかった。 (続く) |